21世紀枠の別海が、選抜高校野球大会(3月18日開幕、甲子園)に出場することが決まった。酪農のまちから甲子園史上最東端出場校となるチームの話題を連載「別海とモウします」と題し、3回に渡って紹介する。第2回は島影隆啓監督(41)。

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別海ナインを指導する島影監督は、別海町内のコンビニエンスストアで副店長を務めている。家業の3代目だ。赤色のエプロンに身を包み、午前3時半に出勤。店内調理のおにぎりなどの商品を仕込み、午前7時ごろに業務を終える。1度帰宅し、夕方にはユニホームに装いを変え、厳しくも情熱的な外部指導者に変貌する。

この生活サイクルを16年の監督就任以来、続けてきた。年齢を重ねるごとに体力的な厳しさを感じることもあったが「いつか甲子園に」という思いが、原動力になった。14年3月に母校武修館監督を退任。6年間の在任期間で、10年夏の北北海道大会準優勝、21世紀枠地区推薦校からの落選を経験していた。今回の21世紀枠選出の瞬間、頭に思い浮かんだのは就任初年度の野球部メンバー4人の顔だった。

中でも特別な思いを抱くのは、16年秋から主将を務めた大坂大和さん(24)。助っ人1人を加えて9人をそろえるのがやっとのチームで、大敗した練習試合後に泣きながら語り合ったこともあった。「大坂とは1番苦労を重ねた。今の環境は当たり前じゃないということを今の子にも忘れてほしくない」。17年夏の公式戦初勝利まで1年半を費やした。

苦節8年の苦労が報われた。21世紀枠の発表はナインがいる体育館ではなく、同校敷地内に駐車した車内で家族と一緒に聞いた。「両親や家族が支えてくれたからできたこと。家族に対しても恩返しができたかな」。発表翌日の27日、勤務先の店舗には、スポーツ紙など新聞が通常時の10倍以上の各20部が納入された。1面に「別海」の文字がおどった。「まさか別海が1面飾る日が来るとは。一生の思い出になる」とかみしめた。

異色の監督が率いる選手16人の少人数チームが、秋季北海道大会初勝利から破竹の勢いで4強入り。その快進撃に全国大会経験者の存在があった。(つづく)

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